福島地方裁判所 昭和56年(わ)91号 判決 1981年8月20日
(一)本店所在地
福島県双葉郡大熊町大字熊字新町七二五番地
法人の名称
株式会社福宝建設
代表者
代表取締役 伊東敬朔
(二)本籍
同県相馬郡鹿島町鹿島字北畑一〇〇番地
住居
同県双葉郡大熊町大字下野上字大野三九三番地
職業
会社役員
氏名
高屋計
生年月日
昭和五年一二月二〇日
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中澤正博出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社福宝建設を罰金九〇〇万円に、被告人高屋計を懲役六月に処する。
被告人高屋計に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社福宝建設(以下「被告会社」という。)は、福島県双葉郡大熊町大字熊字新町七二五番地に本店を置き、土木建築請負等を目的とする資本金五〇〇〇万円の株式会社であり、被告人高屋計は、被告会社の取締役として同社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人高屋計は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一 昭和五二年四月一日から昭和五三年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が五五〇一万三三五七円で、これに対する法人税額が二〇七〇万四七〇〇円であったにもかかわらず、工事収入の一部を除外し、架空及び水増外注費を計上するなどして、これによって得た資金を仮名普通預金として金融機関に預け入れるなどの行為により、右所得金額中三六六三万七二五〇円を秘匿した上、同年五月三一日、同県相馬市中村字曲田九二番地の二所在の所轄相馬税務署において、同税務署長に対し、当該事業年度の所得金額が一八三七万六一〇七円で、これに対する法人税額が六〇八万五五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一四六一万九二〇〇円を納期限まで納入せず、もって、不正の行為により同額の税を免れ、
第二 昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二九五七万二三八一円で、これに対する法人税額が一〇六一万六八〇〇円であったにもかかわらず、右と同様の行為により、右所得金額中一九七八万四三二七円を秘匿した上、同年五月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、当該事業年度の所得金額が九七八万八〇五四円で、これに対する法人税額が二六二万二八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額七九九万四〇〇〇円を納期限まで納入せず、もって不正の行為により同額の税を免れ、
第三 昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が三二一六万五五〇〇円で、これに対する法人税額が一一二四万三〇〇〇円であったにもかかわらず、右と同様の行為により、右所得金額中二一〇八万二五六七円を秘匿した上、同年五月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、当該事業年度の所得金額が一一〇八万二九三三円で、これに対する法人税額が二八六万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額八三七万五二〇〇円を納期限まで納入せず、もって、不正の行為により同額の税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 伊藤節夫(三通)、吉田好一、佐藤博、佐藤信雄及び伊藤吉夫(二通)の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の完成工事収入除外及び簿外工事原価調査書、架空外注費等調査書、簿外預金等調査書、役員報酬等調査書、専務勘定調査書、株式取得調査書、交際費の損金不算入額調査書及び銀行等調査書
一 会社登記簿謄本一通及び閉鎖登記簿謄本二通(昭和五二年六月一七日及び昭和五四年七月一八日各閉鎖のもの)
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 被告会社代表者伊藤敬朔及び被告人高屋計の当公判廷における各供述
一 伊藤敬朔の検察官に対する供述調書
一 被告人高屋計の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書一二通
判示第一及び第二の各事実について
一 大蔵事務官作成の架空経費調査書及び簿外普通預金(伊東滝子・佐藤一)入金調査書
判示第一の事実について
一 小林平八の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の法人税修正確定申告書謄本及び脱税額計算書(いずれも自昭和五二年四月一日至昭和五三年三月三一日のもの)
一 押収してある総勘定元帳一綴(昭和五六年押第二五号符号一)、元帳一綴(同号符号四)、集金原簿一綴(同号符号六)、原発工事収支報告書一綴(同号符号七)及び法人税確定申告書一綴(同号符号九)
判示第二及び第三の各事実について
一 大蔵事務官作成の簿外借入金調査書及び減価償却調査書
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の未納事業税額計算書、法人税額計算書、法人税修正確定申告書謄本及び脱税計算書(いずれも自昭和五三年四月一日至昭和五四年三月三一日のもの)
一 押収してある総勘定元帳一綴(同号符号二)、元帳一綴(同号符号五)及び法人税確定申告書一綴(同号符号五)及び法人税確定申告書一綴(同号符号一〇)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の未納事業税額計算書、法人税修正確定申告書謄本及び脱税額計算書(いずれも自昭和五四年四月一日至昭和五五年三月三一日のもの)
一 古舘智恵子作成の上申書
一 押収してある総勘定元帳一綴(同号符号三)、元帳一綴(同号符号八)及び法人税確定申告書一綴(同号符号一一)
(法令の適用)
被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条、七四条一項二号に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金九〇〇万円に処することとし、被告人高屋計の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条、七四条一項二号に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役六月に処し、同被告人に対し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山室恵)